顧問弁護士ときいてどのようなことを思い浮かべますか?
なんとなく会社の味方になってくれる弁護士というイメージはあっても、具体的にどんなことをしているのかわからないという方も多いのではないでしょうか。
企業経営には様々な法律問題がついてまわります。
企業経営に関連する法律を正しく理解し、適切な対応・対策をしなければ、気が付かない間に法令違反をしてしまったり、事前のリスク対策をしていなかったために大きなトラブルが発生してしまったり、トラブルが発生した時の会社の損失が大きくなってしまうことがあります。
また、企業に対してコンプライアンスがより一層強く求められている昨今では、法令違反が明るみになれば、社会的な信用を失い、経営難に陥ったり、働き手が集まらなくなったりというトラブルに見舞われる可能性もあるのです。
しかし、企業経営にかかわる法律は多数あるので、そのすべてを把握し、適切に対応することは簡単なことではありません。そんなときに役に立つのが顧問弁護士です。
この記事では、顧問弁護士がどんなことをしてくれるのか、役割や必要性、顧問弁護士がいるメリットや、費用の相場等についてご紹介します。
この記事を最後まで読んでいただければ、会社の規模の大小を問わず安定した経営のためには顧問弁護士が必要な理由をお分かりいただけるのではないかと思います。
ー この記事の目次
1.顧問弁護士とは?
顧問弁護士とは、企業から継続的に相談を受け、企業活動に関する法的な助言やトラブルの予防や解決のための助言をしたり、リーガルチェック等の法律事務を行ったりする弁護士のことです。会社を経営していると、様々な法的なトラブルに直面します。顧問弁護士は、会社経営についてまわる法的な問題に対して、法律の専門家として、トラブルの発生を未然に防ぐための予防法務に取り組んだり、トラブルが発生した時に解決方法の助言などを行います。英語ではbond lawyer、corporate lawyerなどと呼ばれます。
1−1.咲くやこの花法律事務所が考えている「顧問弁護士」とは?
筆者が代表をつとめる弁護士法人咲くやこの花法律事務所は、「(1)平時から紛争を未然に防ぐための予防法務に徹底的に取り組み、(2)トラブル発生時は迅速に対応し、(3)小さな心配事、困り事もいつでも気軽に相談できる存在」が、顧問弁護士だと考えています。
顧問弁護士の意義は、法的な問題から会社を守り、経営者が安心して経営に集中できる環境を作ることです。法務面の整備ができていないと、常に不安とトラブルリスクを抱えながら企業経営を行うことになります。また、外部の取引先や顧客、あるいは従業員からも企業経営に対する信頼を得ることができなくなります。
顧問弁護士は、企業が抱える法的な問題や困り事を、法律相談やリーガルチェック等の法律事務を通して解消し、円滑な会社経営をサポートします。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスでは、法律に関する困り事だけでなく、企業経営に関することや、弁護士に相談するほどではないかもしれないと思うような些細な事まで、どんな相談にも対応します。
企業法務に詳しい弁護士として、数多くの企業を見てきた経験を活かし、単なる法律のアドバイザーにとどまらず、経営者のよき相談相手になって、経営者と一緒に会社を守るパートナーとなるのが顧問弁護士です。
▶【参考動画】この記事の筆者である弁護士 西川暢春が「顧問弁護士とは?役割・顧問料・必要性について【前編】と【後編】」を動画で詳しく解説していますので、あわせてご覧ください。
2.顧問弁護士とその他の弁護士の違いとは?
企業経営にかかわる弁護士には、顧問弁護士だけでなく、スポット弁護士や企業内弁護士があります。
ここからは、それぞれの弁護士の役割の違いをご紹介します。また、弁護士が選任されることが多い役職である社外取締役と監査役と、顧問弁護士の関係についてもご説明します。
2−1.スポット弁護士との違い
スポット弁護士とは、単発で仕事を依頼する弁護士のことをいいます。スポットで弁護士に依頼する場合、まずは弁護士を探して相談の予約をし、相談した上で依頼をする必要があるため、顧問弁護士のようにすぐに相談はできません。スポット弁護士の主な役割はトラブルの解決です。
それに対して、顧問弁護士は、トラブルが発生した時の相談・対応だけでなく、トラブルの発生を防ぐ予防法務にも取り組みます。顧問弁護士サービスを利用することで、契約書の整備やリーガルチェック、労務環境の整備、事業に関係する法令への対応等に日ごろから取り組むことができ、そもそもトラブルが発生しにくい会社、トラブルが発生しても会社の意向に沿った解決ができる会社になっていきます。
これは、継続して相談を受ける顧問弁護士だからこそできることで、スポット弁護士にはない強みです。
予防法務の取り組みは、早くスタートすればするほど、取り組みやすく、かつトラブル予防効果もあらわれやすいです。そのため、企業としての規模が小さい段階であっても、トラブル時にスポットで弁護士に依頼する対応をするのではなく、顧問弁護士サービスを利用して予防法務に日ごろから取り組むことが大切です。
2−2.企業内弁護士との違い
企業内弁護士とは、企業と雇用契約を結んでいる弁護士のことです。
顧問弁護士は、サービスの1つとして顧問弁護士業務を提供しており、多数の企業と顧問契約をしているのが一般的です。
それに対して、企業内弁護士の場合は、会社と弁護士の関係は雇用主と従業員であり、その会社の専属の弁護士ということになります。
顧問弁護士には毎月顧問料を支払いますが、企業内弁護士には会社が給与を支払うことになるため、通常は企業内弁護士の方がコストは高くなります。
自社の法務ニーズが大きく、常時、弁護士が処理するべき法律事務がたくさんある場合は、企業内弁護士も選択肢の1つです。
2−3.社外取締役との違い
社外取締役とは、株式会社の取締役のうち、社外から迎えた取締役のことです。その詳細な定義は会社法2条15号に定められていますが、過去10年以内に従業員や業務執行取締役であった人は取締役に就任したとしても社外取締役にはあたりません。
このように、その会社での勤務経験が過去10年間なく、しがらみがない人材が取締役になることで、社内の利害関係にとらわれず、客観的な視点で経営をチェックすることがその役割です。企業の運営に必要な専門知識を取り入れる目的で、弁護士や会計士等の専門家が社外取締役に選任されるケースも数多くあります。
社外取締役と顧問弁護士の大きな違いは、社外取締役は代表取締役などの経営陣を監視し、必要に応じて不適切な経営をする経営陣の交代を求める立場であるのに対し、顧問弁護士は経営陣をサポートし、アドバイスをする立場であることです。このように法的な位置づけが大きく異なります。
2−4.監査役との違い
監査役とは、株主総会で選任される役員の一つで、取締役が法律を守って業務を行っているか、会社の会計に不正がないかをチェックし、不正が発覚した際は取締役の責任を追及する役割があります。
顧問弁護士は取締役に助言等を行い、企業経営をサポートする立場であるのに対し、監査役は取締役を監査する立場であるという違いがあります。
顧問弁護士が監査役を兼任することは違法ではありません。しかし、常日頃、取締役からの相談を受け、サポートする立場の顧問弁護士が、いざ取締役の不正行為等が発覚した時に、監査役として取締役の責任を厳しく追及することができるのかは疑問が残ります。役割を十分に果たせない可能性があるため、兼任は避けることが適切です。
3.顧問弁護士がいる企業の割合
日本国内の企業に、どのくらいの割合で顧問弁護士がいるのかを調べた正確な統計調査はありませんが、2017年に日本弁護士連合会が中小企業を対象に行った調査において、「相談できる弁護士がいる」と答えた企業の割合は37.3%でした。
ただし、顧問弁護士の必要性は年々意識されるようになってきており、顧問弁護士がいる企業の割合も年々増えてきているというのが筆者の実感です。企業規模が大きく、従業員数が多い企業ほど、顧問弁護士がいる割合も高くなる傾向にあります。
4.顧問弁護士の役割と必要性
ここからは、顧問弁護士がどのような役割を担っているのか、なぜ必要なのかをご説明します。
4−1.顧問弁護士の役割とは?
顧問弁護士には、大きくわけて「予防法務」と「トラブル発生時の対応」の2つの役割があります。
(1)予防法務
予防法務とは、法的な紛争の発生や、紛争によって生じる損失の拡大を未然に防ぐための取り組みのことです。
一度紛争が発生してしまうと、会社は対応に追われることになり、金銭面や労力面で多大なダメージを負うケースも少なくありません。紛争による会社のダメージを回避するためには、まず何よりも紛争を発生させないことが重要です。顧問弁護士は、日頃からこまめに企業からの相談を受け、社内規定の整備や契約書のリーガルチェック等を通して、法的なリスクマネジメントに取り組みます。
▶参考情報:予防法務の重要性や取り組み方については、以下の参考記事をご参照ください。
(2)トラブル発生時の対応
次に、何かトラブルが発生してしまった時は、早い段階で適切な対応をすることが問題の拡大を防ぎ、早期の円満な解決につながります。
法的なリスクを理解せずに自社流で対応したり、対応が遅れてしまったために、大きな問題に発展してしまうこともあります。このような事態を防ぐために、トラブルが起こった時は、早期に顧問弁護士の助言を受けながら対応することが重要です。事案によっては、顧問弁護士が会社の代わりに窓口となって対応し、迅速に紛争を解決します。
4−2.顧問弁護士はなぜ必要?
次に顧問弁護士の必要性について解説していきます。
(1)顧問弁護士の必要性1つ目
弁護士法人咲くやこの花法律事務所へご相談いただく企業の中には、「顧問弁護士を契約しても相談することがない」とおっしゃる方がいらっしゃいます。
しかし、実際には、ご相談いただくと、全く気付いていなかった法的なリスクがあり、トラブルになる前に早急に対応するべきケースが多々あります。
「相談することがない」のではなく、「相談するべきことに気が付いておられない」ケースが多いというのが実感です。何も問題がないと思っていても、後々大きな問題に発展し得るトラブルの種を見落としている可能性があることに注意が必要です。
顧問弁護士がいれば、法律のプロとして、知識や経験を活かして、見落としているリスクや問題点を指摘し、トラブルの予防対策をすることができます。
(2)顧問弁護士の必要性2つ目
大きな会社ではないから顧問弁護士は必要ないという意見もよくお聞きします。
しかし、法的な紛争はどのような会社でも発生する可能性があり、もし何かトラブルが発生してしまった場合、規模が小さい会社ほど、トラブルが経営に及ぼす影響が大きくなります。1つのトラブルが経営に深刻なダメージを与えることもあるため、事前のリスク対策やトラブル発生時の早期対応がより重要になります。
トラブルの影響を受けやすい中小企業こそ顧問弁護士が必要といえます。
4−3.大企業と中小企業の顧問弁護士の役割の違い
大企業と中小企業の顧問弁護士では、それぞれ異なる役割があります。以下では大企業と中小企業に分けて、それぞれの役割を解説していきます。
(1)大企業の顧問弁護士の役割
大企業では、法務部を設置したり、企業内弁護士を雇ったりして、基本的な法律事務は自社でまかなっているケースがほとんどです。
顧問弁護士による対応が必要になるのは、自社では対応できないような専門的な知識を必要とする場合やトラブルが訴訟等に発展した場合等です。分野ごとに専門の弁護士を契約しているケースも多く、より高い専門性を求められるのが、大企業の顧問弁護士といえます。
(2)中小企業の顧問弁護士の役割
それに対し、中小企業では、法務部自体がなく、経営者が法務を担っている、または他部署が兼務しているというケースが多いです。
社内だけでは法務に十分に対応できていないケースが多いため、中小企業の顧問弁護士には、企業法務全般に関する、より幅広い知識や対応能力が求められます。また、多くの会社を担当する顧問弁護士が他社事例なども踏まえて中小企業に助言することが求められます。
自社で法務部を設置することが難しい中小企業にとって、顧問弁護士は、法務部門の外注と考えることもできます。
中小企業のおける顧問弁護士の役割や必要性について、詳しくは以下の記事で解説していますのでご参照ください。
5.何をする?顧問弁護士の仕事内容
顧問弁護士という存在は知っていても、実際にどんなことをするのか知らないという方もいらっしゃるかもしれません。
ここからは、顧問弁護士がどのような面で企業活動をサポートしているのか、顧問弁護士の仕事内容をご紹介します。
顧問契約の範囲内でどこまで対応してくれるかは、法律事務所によって様々です。
法律相談のみ対応している場合もあれば、契約書の作成や債権回収のための内容証明郵便の送付等も顧問契約の範囲内で対応している場合もあります。対応内容が多ければ多いほど顧問料は高くなるのが一般的です。顧問弁護士に何を依頼したいのか、どのくらい相談事項があるのか等、自社のニーズを考慮した上で、自社に合った顧問弁護士を選ぶことが重要です。
5−1.会社経営に関する法的なアドバイス
「会社法」「商取引法」「労働基準法」「著作権法」「商標法」「各種業法」等、会社経営に関連する法律は多岐に渡ります。
企業活動をする以上、どんな会社も法律と無関係ではいられません。企業の経営者は、多かれ少なかれ、法的な判断を迫られることになります。顧問弁護士は、企業経営についてまわるあらゆる法律問題について相談を受け、法律の専門家として助言を行います。
5−2.トラブルの予防対策やトラブル発生時の相談
常日頃から継続的に相談を受け、法務関係の整備を行い、トラブルの発生を防止するのが顧問弁護士の大きな役割です。
もし何かトラブルが発生してしまった場合も、顧問弁護士がいれば、いち早く弁護士に相談し、トラブルに対応することができます。
トラブルは初期対応が非常に重要です。自己判断で誤った対応をすると問題がこじれてしまうことが少なくありません。初期段階から弁護士の助言を受けて対応することがよりよい解決につながります。
5−3.リーガルチェックや書面の作成
リーガルチェックとは、契約書や就業規則、規約等の法律文書に法的な問題点がないか、自社に不利な条項が含まれていないか等をチェックすることです。リーガルチェックを怠ると、いざトラブルになったときに会社として不利な立場に立たされたり、契約違反の責任を問われたり、法律違反として制裁を受けたりする可能性があります。
インターネットで検索すると契約書等のひな型が多数ヒットしますが、安易にネットで拾ってきた書面を使うことは、非常に大きなリスクがあります。
契約の実態にそぐわない内容だったり、法改正に対応できていなかったり、必要な条項が網羅されておらず、トラブルの誘因になったり、トラブルが発生した時に自社に不利になる可能性があるためです。
契約に伴うリスク軽減のためには、日頃から弁護士のリーガルチェックを受け、弁護士の助言を受けながら契約書を作成することが重要です。
▶参考情報:リーガルチェックの重要性については、以下の参考記事をご参照ください。
5−4.セカンドオピニオン
最近は、複数の顧問弁護士を依頼している企業も増えてきています。
これは、複数の弁護士の意見を聞いてみたいというセカンドオピニオン目的であったり、特定の分野ごとにより精通した弁護士との契約を希望している等の理由があると考えられます。
弁護士によって、得意分野やトラブルの解決方針は様々です。複数の意見を取り入れることで、より希望に近い解決方法が見つかることもあります。
5−5.ホームページ掲載
企業のホームページに、顧問弁護士として弁護士名や法律事務所名が表示されているのを見たことがある方も多いのではないでしょうか。
顧問弁護士がいることを対外的に示すことで、コンプライアンス意識や危機管理意識の高さのアピールになり、取引先や顧客からの信用獲得につながります。
また、クレームが多い業種では、顧客からの無理な要求や言いがかり的なクレームへの牽制にもなります。
5−6.英語対応が可能な弁護士もいる
企業活動のグローバル化に伴い、外国語での相談対応や、英文契約書のリーガルチェック等を必要とする企業も増えています。
全体数としては多くありませんが、外国語に対応した顧問弁護士プランを提供している弁護士もいます。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、英文契約書のリーガルチェックや英語対応をご希望の企業様向けに、英語対応オプションをご用意しています。英語対応オプションをはじめとする顧問契約プランのご説明は以下をご参照ください。
6.取り扱うトラブルの内容
企業経営においては、多種多様なトラブルが発生します。ここからは、顧問弁護士が相談を受けることが多い代表的なトラブルをご紹介します。
6−1.問題社員対応や残業代請求等の労働問題
顧問弁護士が扱うトラブルの中で特に相談件数が多いのが、従業員との労働問題です。
従業員との間で発生する労働問題には、未払い賃金請求や、解雇・雇い止めトラブル、従業員への退職勧奨、問題行動や勤務不良への対応、休職・退職に関するトラブル、セクハラ・パワハラ等があります。
労働問題が深刻化すると、離職者が増えたり、社内の規律が乱れたり、業務に支障をきたすことがあるため、日頃から顧問弁護士のサポートを受けながら、紛争を予防するための取り組みや、問題が発生した時の早期対応を行う必要があります。
6−2.従業員の労務管理
労働問題を発生させないためには、日頃の労務管理が非常に重要です。日頃の労務管理がきちんとできているかどうかで、トラブルが発生した時の結果も全く違ってきます。
雇用契約書や就業規則等の整備や労働関連法の改正への対応、昇給や賞与査定、転勤や昇進・降格の人事異動等の場面で顧問弁護士がサポートを行います。
6−3.クレーム対応
クレーム対応は、初期対応が重要です。顧問弁護士に相談しながら対応をすることで、初期対応の誤りで問題がこじれてしまうことを防ぐことができます。
また、カスタマーハラスメントと呼ばれるような悪質なクレームは、従業員を疲弊させ、業務に支障をきたすことがあります。どこまでが正当な要求で、どこからが過剰な要求なのか線引きを顧問弁護士に相談しながら見極め、行き過ぎたクレームには毅然と対応することが必要です。
クレームが発生した時の対応や、過剰な要求をともなうクレームや悪質なクレームへの対応、妥当な解決案の検討やクレーム対応マニュアルの作成、クレーム対応体制の構築等の場面で顧問弁護士がサポートを行います。
6−4.著作権や商標権等の知的財産権
いざという時に自社の権利を守るためには、知的財産を権利化し、適切に管理することが必要です。また、著作権や商標権、意匠権、特許権等に関する正しい知識がなければ、知らず知らずのうちに他者の権利を侵害してしまい、多額の損害賠償を請求されるといった事態にもなりかねません。
意匠登録、商標登録等の知的財産の権利化や、権利侵害をされた時の使用差止請求や損害賠償請求、他者の権利を侵害してしまった時の対応等の場面で顧問弁護士がサポートを行います。
6−5.債権回収
工事代金の未払いや売買代金の未払い等の債権回収も頻繁に発生するトラブルです。未払い期間が長くなればなるほど回収が困難になることが多いため、未払いが発生した時点で迅速に対応することが重要です。
債権回収の方法についての助言や債務者との交渉、債務者に対する法的措置や財産の差押え、未払いに備えた契約書の整備等の場面で顧問弁護士がサポートを行います。
6−6.誹謗中傷への対応
誰でも簡単に発信ができるようになったことにより、悪質なクチコミや風評被害、誹謗中傷に悩まされる企業が増えてきています。
悪質な書き込みに対する対応や、誹謗中傷記事の投稿者の特定、悪質なクチコミや誹謗中傷記事の削除請求、投稿者に対する損害賠償請求等の場面で顧問弁護士がサポートを行います。
6−7.労災事故に関する対応
勤務中に従業員がケガをしたり、仕事が原因で病気になったり、亡くなったりした場合、会社は労災事故として対応することが求められます。
労災事故が発生してしまった場合の被災労働者や遺族への対応や、被災者からの損害賠償請求への対応、労働基準監督署や警察の対応、労災請求への対応等の場面で顧問弁護士がサポートを行います。
6−8.株主総会への対応
株主総会の実施については、会社法でルールが決められています。総会の運営に不備があると、決議が取り消されたり、無効になったりする恐れがあるため、法律のルールに従って行うことが重要です。
株主総会の事前準備(想定される質問への対応、議事の進行等)、招集手続きや決議の方法の適法性の確認、株主総会への同席、議事録の作成等の場面で顧問弁護士がサポートを行います。
6−9.スタートアップ企業の支援
スタートアップ企業では、労働問題・労務やクレーム対応、債権回収といった通常の会社において必要となるテーマへの対応はもちろんですが、ビジネスモデルの適法性の調査や資金調達、契約書の作成など、ビジネスの基礎を形作るための法的なサポートも重要になります。スタートアップ企業の顧問弁護士は、これらのサポートを提供することで、ビジネスの立ち上げとその成長を支援します。
スタートアップ企業の顧問弁護士の役割やメリットについては以下で詳しく解説していますのでご参照ください。
6−10.プライベートな相談への対応
企業法務に関することではありませんが、役員の離婚や遺産相続、交通事故、詐欺被害等といった個人的な相談に対応している顧問弁護士もいます。
一から弁護士を探そうと思うと、まずは対応してくれる弁護士を探して、相談の予約をするという手順を踏む必要があり、時間と手間がかかります。顧問弁護士が対応してくれれば、すぐに相談することができ、日頃からの信頼関係があるため、相談しやすいというメリットもあります。
6−11.社員の相談への対応
顧問弁護士が、社員からの私的な相談に対応している場合もあります。
私生活で問題や不安を抱えていても、弁護士への相談にハードルを感じて、なかなか相談できずにいる方もいます。そんなときに、会社の顧問弁護士に相談ができれば、従業員の不安解消につながり、業務に集中してもらうことができます。
顧問弁護士による法律相談は、従業員への福利厚生にもなります。
社員からの私的な相談を顧問弁護士が受けることについては、その相談者と会社の間でトラブルが発生した際に、会社がその事案について顧問弁護士のサポートを受けることができなくなる危険があるという注意点もあります。
例えば、会社が問題社員と認識し対応に苦慮している従業員が自身の私的な相談を顧問弁護士にした場合、顧問弁護士が、その従業員を対象とする懲戒処分や解雇について会社側の立場でサポートをすることが事実上困難になります。
7.顧問弁護士サービスを利用するメリットとデメリット
ここからは、顧問弁護士サービスを利用するメリットとデメリットについて説明します。
7−1.顧問弁護士サービスを利用するメリット
顧問弁護士は、予約なしで、いつでも気軽に相談できることがメリットです。
弁護士へのアクセスが容易なので、日頃からこまめに弁護士に相談することができ、自分では気が付いていない法的なリスクを指摘してもらえたり、弁護士に相談するか迷うような些細な心配事も気軽に相談することができます。
また、トラブル防止のための予防法務は、短期間でできるものではなく、日頃から会社と顧問弁護士が協力して会社の整備を積み重ね、長期的に進めていくものなので、顧問弁護士がいるからこそできる取り組みといえます。
トラブルが発生してしまった場合も、顧問弁護士がいない会社は、まずは弁護士を探すところから始める必要があるため、対応してくれる弁護士を見つけるまでに労力と時間を要し、対応が後手に回りがちです。
顧問弁護士がいれば、いつでもすぐに弁護士に相談することができ、自己判断で対応してトラブルがこじれてしまうことを防ぐことができます。
顧問弁護士は、日頃から相談を受け、会社の内情をよく理解しているからこそ、会社の実情に沿った解決方針を提案できる点もメリットです。
7−2.顧問弁護士サービスを利用することによるデメリット
顧問弁護士の唯一のデメリットといえるのは、顧問料がかかることです。
顧問弁護士がいなければ顧問料はかかりませんが、もし何かトラブルが発生して、スポットで弁護士に対応を依頼するとなると、結局は弁護士費用を支払うことになります。また、トラブルが発生した時に生じる負担は費用面だけではありません。対応するための労力も必要になりますし、トラブルを抱えているということが精神的にも負担になります。
日頃から顧問弁護士を活用し、トラブルの予防に注力した方が、費用面でも労力面でも、結果的に負担が少なくすむことになります。
むしろ、顧問弁護士がいない会社には、以下のようなデメリットがあります。
- 事前のリスク対策が不十分でトラブル発生時の会社の損失が大きくなる
- トラブル発生の初期段階で自己判断で誤った対応をしてしまい、トラブルがこじれて問題が大きくなってしまうことが多い
このような点を考えると、顧問弁護士がいないデメリットの方が大きいといえるのではないでしょうか。
8.顧問弁護士の費用の相場はどのくらい?
顧問料に一律の基準はなく、各々が自由に料金設定をすることができるため、弁護士や法律事務所ごとに料金体系が異なります。
ここからは、顧問弁護士の費用の目安についてご紹介します。
8−1.顧問契約に必要な料金は月額3万円~5万円が相場
少し古い調査ですが、2009年に、日本弁護士連合会が実施した弁護士を対象とするアンケート調査では、顧問料の平均額は「月額4万2636円」でした。料金設定として最も多いのは「月額5万円」の41.7%で、次いで「月額3万円」が36.5%となっています。
▶参考:2009年日本弁護士連合会が実施した弁護士を対象とするアンケート調査「すぐに回答できる相談を顧問契約の範囲とする場合の月額顧問料はいくらか?」の回答データ
・参照元:日本弁護士連合会「中小企業のための弁護士報酬目安[2009年アンケート結果版] 簡易版」(PDF)
ただし、その後、徐々に顧問料の値上がりがあり、現在の平均的な顧問料は月5万円程度というのが筆者の感覚です。また、特に首都圏では月10万円程度~の顧問料となる法律事務所も少なくありません。
多くの法律事務所では、相談の頻度や対応内容等に応じて、複数のプランが用意されています。対応内容が多くなるにつれて、顧問料も高額になるのが一般的です。
参考として、弁護士法人咲くやこの花法律事務所で提供している顧問弁護士サービスの顧問契約プランをご紹介します。
いずれのプランも顧問契約の範囲内で、法律相談やリーガルチェックに対応していますが、プランによって対応頻度や対応内容が異なります。
▶参考:弁護士法人咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスの顧問契約プラン
プラン |
ミニマム |
スタンダード |
しっかりサポート |
プレミアム |
顧問料 |
月額:
3万円+税 |
月額:
5万円+税 |
月額:
10万円+税 |
月額:
15万円+税 |
プランの 目安 |
月1回~2回程度のご相談をお考えの方
|
週1回程度のご相談をお考えの方
|
週2回程度のご相談をお考えの方
|
週3回程度のご相談をお考えの方
|
各顧問契約プランごとの詳しいサポート内容は以下のページからご確認ください。
8−2.最近は格安プランやサブスクプランもある
最近は、大幅に料金を抑えた格安プランや、サブスクリプションプランを提供している法律事務所もあります。
このようなプランは、月あたりの相談回数や相談方法、対応内容に制限があったり、一定以上の相談には追加料金がかかったりする可能性があります。
「せっかく契約したのに十分な相談ができなかった」、「費用を抑えたくて安いプランを契約したのに結果的に費用がかさんでしまった」、ということにならないように、契約前に相談回数の制限や対応内容等を確認しておくことが重要です。
8−3.事件の依頼には別途着手金や報酬金がかかる
多くの法律事務所では、法律相談と契約書のリーガルチェックを顧問契約の対応範囲としています。
それ以外の契約書等の書面の作成や、クレーム対応、残業代請求の対応、労働審判や訴訟等の個別の事件の対応を顧問弁護士に依頼する場合は、顧問料とは別に、着手金や報酬金といった弁護士費用がかかるのが一般的です。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、トラブルが発生した際の相手との交渉ごとや裁判の弁護士費用は、顧問料の額、顧問契約の期間等を考慮して事案の内容によっては減額調整するなど、顧問契約の趣旨を踏まえて決定しています。例えば、一定期間以上顧問契約を継続していただいている顧問先において毎月の相談件数が少ない場合は、その点を考慮して、個別案件の弁護士費用を割り引き、また、場合によっては顧問契約の範囲内として別途費用をいただかずに対応しますので、顧問料が無駄になることがありません。
顧問弁護士の費用の相場の情報など、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
9.顧問弁護士の探し方と選び方
顧問弁護士に興味はあるけれど、弁護士との接点がなく、探し方がわからないという方もいらっしゃると思います。
ここからは、顧問弁護士の探し方と顧問弁護士選びに失敗しないためにおさえておくべきポイントをご紹介します。
9−1.インターネット検索や紹介で探すのが一般的
顧問弁護士の探し方として多いのは、インターネット検索と紹介です。
インターネットで「顧問弁護士」と検索すると多数の法律事務所がヒットします。最近は、ホームページで料金体系やサービス内容等を詳しく紹介している法律事務所が多く、ニーズに合った弁護士を探しやすくなりました。
自社と距離が近い弁護士を探している場合は「地域名+顧問弁護士」、業界に詳しい弁護士を探している場合は「業種+顧問弁護士」、特定の分野の問題に詳しい弁護士を探している場合は「分野名+顧問弁護士」等、複数のキーワードを組み合わせて検索することで、自社のニーズに対応している法律事務所を探すことができます。
また、紹介してもらうことにより顧問弁護士を探す方法もあります。多いのは、取引先や知人から紹介されるケースや、社労士や税理士から紹介されるケースです。
紹介の場合は、紹介者のお墨付きがあるので安心感がある点がメリットですが、紹介された弁護士と相性が良くないと感じた場合でも、紹介者の手前、断りづらくなってしまう恐れもあり、その点は考慮しておく必要があります。また、取引先に顧問弁護士を紹介してもらい、取引先と同じ顧問弁護士に依頼した場合、利益相反との関係で、その取引先を相手方とする契約書のリーガルチェックや紛争については顧問弁護士に相談できないことになるので注意が必要です。
9−2.選ぶ時のポイント
顧問弁護士を選ぶ際におさえておくべきポイントは以下の5点です。
- 企業法務を専門とする弁護士を選ぶ
- 経験豊富な弁護士・事務所を選ぶ
- 気軽に相談でき、説明が分かりやすい弁護士を選ぶ
- 自社のニーズに合う弁護士を選ぶ(対応内容や費用面等)
- 連絡がつきやすいかどうかを確認する(対応時間や連絡手段等)
弁護士にも医者と同じように専門分野や得意分野があります。会社の顧問弁護士を依頼するのであれば、企業法務に精通し、企業で発生するトラブルについて経験豊富な弁護士を選ぶのがベストです。また、連絡のとりやすさや話しやすさなどの弁護士の人柄も重要なポイントです。
顧問弁護士は、気軽に相談ができてこそ、効果を発揮します。連絡が取りづらかったり、レスポンスが悪かったり、専門用語が多く説明が分かりづらいような弁護士は、顧問弁護士には不向きです。実際に話してみて、相性の良い弁護士を選ぶことをおすすめします。
顧問弁護士の探し方の方法や、また自社にあった選び方などの重要なポイントや注意点などについては、以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
10.どうやって契約する?顧問弁護士の依頼の流れ
顧問弁護士を依頼するまでの一般的な流れは以下のとおりです。
10−1.顧問弁護士の候補を探す
顧問弁護士を探す方法は、インターネット検索や、取引先や知人、税理士や社労士からの紹介等の方法があります。
10−2.弁護士との面談を申し込む
話を聞いてみたいと感じる法律事務所や弁護士が見つかったら、法律事務所に問い合わせて、弁護士との面談の予約をします。
10−3.弁護士と面談をする
実際に弁護士と面談し、顧問弁護士サービスについての説明を受けます。
この時に、以下の点を確認しておくとよいでしょう。
- 顧問契約の範囲内でどこまで対応してもらえるか
- 相談回数や相談時間に制限がないか
- 連絡がとりやすいかどうか(電話やメール、zoom等で相談ができるかどうか)
- 弁護士との話しやすさはどうか、親身になってくれそうか
10−4.契約書を取り交わす
依頼したいと思える顧問弁護士が見つかったら、契約書を取り交わし、顧問契約を締結します。
相談時の弁護士への連絡方法や連絡先、顧問料の支払方法等を確認しましょう。
10−5.顧問契約開始
顧問契約のスタートです。
企業経営に関する困り事や心配事を顧問弁護士に相談してみましょう。
昨今では、電話やメール、zoom等の手段で、距離があってもリアルタイムで相談に対応することができるようになっています。
近くに自社が相談したい分野に精通した弁護士がいない場合は、無理に距離の近い弁護士を探すよりも、遠方であっても、専門性の高い弁護士を選ぶことも選択肢の1つです。顧問弁護士のサービスは遠方の弁護士であっても大きな支障は生じません。むしろ、弁護士の専門性や連絡の取りやすさのほうが重要です。
11.顧問弁護士への相談方法
せっかく契約しても、連絡が取りづらかったり、相談方法が限られていたりすると、顧問弁護士サービスを十分に活用することはできません。
顧問弁護士への相談方法には、以下のような方法があります。
- 対面
- 電話
- メール
- Zoom
- Microsoft Teams
- Skype
- Chatwork
- slack
- LINE
どのような方法で相談に対応してもらえるのかは、法律事務所によって様々ですので、契約前に確認しておきましょう。
12.業種別の活用方法
契約書のリーガルチェックや従業員との労働トラブル等は、どんな業種でも共通の相談事項ですが、その業種ならではのトラブルもあります。ここからは、業種別にどのような時に顧問弁護士サービスが使えるのか、顧問弁護士サービスの活用方法をご紹介します。
12−1.クリニック・病院の場合
クリニック・病院で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- 患者からのクレーム対応
- スタッフとの労働トラブル
- 医療費の未払いへの対応
- 医療法による広告規制についての相談
- 誹謗中傷や風評被害への対応
- 厚生局による個別指導への対応
クリニック・病院の場合の顧問弁護士の具体的な活用方法については、活用例をまじえて以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
12−2.大学・学校の場合
大学や学校で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- モンスターペアレントへの対応
- いじめや体罰等の問題への対応
- アカデミックハラスメント等のハラスメント問題
- 授業中や校外活動中の事故
- 教員に対する懲戒処分や雇止め、解雇等の労働トラブル
12−3.不動産業の場合
不動産業で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- 契約書や重要事項説明書の作成
- 手付金や違約金に関するトラブルへの対応
- 不動産の瑕疵、土壌汚染、地盤沈下などのトラブルへの対応
- 建物の明け渡し、立ち退きに関するトラブルへの対応
- 家賃滞納トラブルへの対応
- 漏水事故や天災による破損等のトラブルへの対応
不動産業の顧問弁護士の具体的な活用方法については、活用例をまじえて以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
12−4.芸能事務所の場合
芸能事務所で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- タレントとの契約関係の整備
- タレントの問題行動に対する対応
- 週刊誌等による名誉毀損やプライバシー侵害への対応
- 誹謗中傷への対応
- 商標権の取得等、知的財産関係の処理
12−5.IT企業の場合
IT企業で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- サービスの利用規約やプライバシーポリシーの整備
- システム開発契約書や製作契約書の整備
- 事業モデルの適法性チェック
- 広告の適法性チェック
- 著作権、その他知的財産権に関する処理
12−6.社労士等の士業の場合
行政書士や司法書士、社労士、税理士等の士業で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- クライアントからのクレームや損害賠償請求への対応
クライアントからの法律相談への対応 - 従業員との労働トラブル
12−7.美容院の場合
美容院で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- 雇用契約書や就業規則の整備
- 顧客引き抜きトラブル
- 従業員の独立に関するトラブル
- 顧客からのクレーム対応
- 事業譲渡についての相談
- 店舗名やロゴの商標登録
- 商標権侵害のトラブル
12−8.エステなど美容業界の場合
エステなど美容業界で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
・返金要求や解約、クーリングオフに関するトラブル
・施術中の事故や健康被害に関するトラブル
・広告や宣伝に関するトラブル
・顧客からのクレーム
・従業員との労務トラブル
・退職した従業員とのトラブル
エステなど美容業界の場合の顧問弁護士の具体的な活用方法については、活用例をまじえて以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
12−9.通販事業(EC)の場合
通販事業(EC)で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- 景品表示法や薬事法等を踏まえた広告表現のチェック
- 利用規約やプライバシーポリシーのチェック・作成
- クレームや返金要求に対する対応
- 特定商取引法への対応
12−10.銀行の場合
銀行等の金融機関で顧問弁護士サービスが活用できるのは以下のような場面です。
- 金融規制法等の各種法令、ガイドライン等への対応
- 金融商品取引法に基づく内部統制支援
- 債権回収
- コンプライアンス体制の整備
- インサイダー取引の防止対策
12−11.自治体や行政の場合
自治体や行政で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- 債権管理や債権回収
- 行政に対する不当要求や行政対象暴力に対する対応
- 公務員の懲戒処分等についての相談
- 行政訴訟についての相談
- 入札をめぐるトラブルの相談
12−12.建設業(建築工事業、土木工事業、解体工事業など)の場合
建設業で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- 発注者からの工事についてのクレーム対応
- 発注者から工事のやり直しや追加工事を求められたときの対応
- 工事代金の不払いトラブルの対応
- 工事請負契約書の整備、リーガルチェック
- 従業員との労使トラブルの対応
- 労災事故対応
- 近隣住民からのクレーム対応
建設業(建築工事業、土木工事業、解体工事業など)の顧問弁護士の具体的な活用方法については、活用例をまじえて以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
12−13.社会福祉法人の場合
特別養護老人ホームや障害者支援施設、デイサービスセンターなどの社会福祉法人で顧問弁護士サービスを活用できるのは以下のような場面です。
- 契約書の作成やリーガルチェック
- 利用者とのトラブルに関する相談
- 施設内での事故(介護事故等)に関する相談や対応
- 行政の指導監督に関する助言や立会
- 労務管理
社会福祉法人の顧問弁護士の具体的な活用方法については、活用例をまじえて以下の記事で詳しく解説していますので、ご参照ください。
13.よくある質問
ここからは、顧問弁護士についてのよくある質問にお答えします。
13−1.利益相反とはなんですか?
利益相反とは、利害が対立することをいいます。
弁護士は、依頼者と利害が対立する場面で職務を行うこと(利益相反行為)が法律で禁止されています(弁護士法第25条)。
分かりやすく言うと、紛争の当事者の一方から、すでに相談や依頼を受けている場合、紛争の相手方から相談を受けたり、依頼を受けたりすることはできません。
例えば、以下のような場面では、利益相反との関係で、顧問弁護士に相談をすることができない可能性があります。
- 取引先と顧問弁護士が同じ場合、取引先との間の契約書のリーガルチェックや紛争に関する相談
- 代表取締役の解任に関する相談
▶参考:弁護士法第25条
第二十五条 弁護士は、次に掲げる事件については、その職務を行つてはならない。ただし、第三号及び第九号に掲げる事件については、受任している事件の依頼者が同意した場合は、この限りでない。
一 相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件
二 相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるもの
三 受任している事件の相手方からの依頼による他の事件
四 公務員として職務上取り扱つた事件
五 仲裁手続により仲裁人として取り扱つた事件
六 弁護士法人(第三十条の二第一項に規定する弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人(外国弁護士による法律事務の取扱い等に関する法律(昭和六十一年法律第六十六号)第二条第六号に規定する弁護士・外国法事務弁護士共同法人をいう。以下同じ。)の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法事務弁護士法人(同条第五号に規定する外国法事務弁護士法人をいう。以下この条において同じ。)の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けて賛助し、又はその依頼を承諾した事件であつて、自らこれに関与したもの
七 弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員若しくは使用人である弁護士又は外国法事務弁護士法人の使用人である弁護士としてその業務に従事していた期間内に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方の協議を受けた事件で、その協議の程度及び方法が信頼関係に基づくと認められるものであつて、自らこれに関与したもの
八 弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が相手方から受任している事件
九 弁護士法人若しくは弁護士・外国法事務弁護士共同法人の社員若しくは使用人又は外国法事務弁護士法人の使用人である場合に、当該弁護士法人、当該弁護士・外国法事務弁護士共同法人又は当該外国法事務弁護士法人が受任している事件(当該弁護士が自ら関与しているものに限る。)の相手方からの依頼による他の事件
・参照元:「弁護士法」の条文はこちら
13−2.個人事業主(フリーランス)ですが顧問弁護士は必要ですか?
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、個人事業主(フリーランス)の方にも顧問弁護士サービスの利用をおすすめしています。
個人事業主(フリーランス)の場合、法人に比べて、トラブルが発生した時のリスクが圧倒的に高くなっています。
何かトラブルが発生した時に、法人の場合は訴えられるのは会社ですが、個人事業主(フリーランス)の場合は個人が訴えられることになります。裁判になって敗訴した場合は、個人の財産が差し押さえられる可能性もあります。トラブルの影響がダイレクトに個人に降りかかるため、一度トラブルが起きてしまうと生活に重大な支障を及ぼすことになりかねません。
そのため、個人事業主(フリーランス)は、トラブルを防ぐ予防法務や、トラブルの影響を最小限におさえるための早期対応がより一層重要になります。
個人事業主・フリーランスにおける顧問弁護士の必要性をはじめ、メリット・デメリットなどについて詳しくは以下の記事で解説していますので、ご参照ください。
13−3.零細企業ですが顧問弁護士は必要ですか?
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、零細企業にも顧問弁護士をおすすめしています。
規模が小さく、限られた資本で運営している零細企業では、1つのトラブルで会社の経営が深刻なダメージを受けることがあります。
そのため、トラブルを発生させないための予防法務が何よりも重要です。また、トラブルが発生した場合もいち早く弁護士の助言を受けた上で対応する必要があります。
零細企業では、人的リソースの不足から、法務面に十分に手が回っていないことが少なくありません。雇用管理や法改正への対応、契約書の整備等、自社で対応しきれていない法務面を補うために、顧問弁護士サービスを活用することが重要になります。
13−4.起業時に顧問弁護士は必要ですか?
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、起業時から顧問弁護士サービスの利用をおすすめしています。
起業時は、事業に関連する法令のチェックや、従業員を雇用するための雇用契約書や就業規則等の整備、取引先との契約書の作成やリーガルチェック等、法務面で対応するべきことが数多くあります。
会社を設立した時点できちんと整備していなかったために、後々のトラブルの原因になったり、トラブルが発生した時に会社のウィークポイントになってしまうということもあり得ます。起業の段階で法務面の整備をしておくことは非常に重要です。
13−5.顧問弁護士は途中で契約解除できますか?
契約解除のルールは法律事務所によって異なります。
任意のタイミングでいつでも解約可能としているところもあれば、契約期間中の解約ができない契約内容になっていたり、解約料が発生したりするところもあります。契約前に契約解除のルールを確認しておくことが適切です。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、契約期間の途中でも、顧問弁護士サービスを解約料なしで解約できることとしています。
ただし、顧問契約は、継続的に相談を受け、信頼関係を構築した上で、長期的に会社の法務面を整備していくことを目的としています。初めから短期間だけ契約するつもりで依頼したり、一時的にサービスを受けることを目的として契約したりすることは適切ではありません。
13−6.顧問弁護士は途中で変更できますか?
可能です。
顧問弁護士は、長期的に継続して相談を受けてこそ効果があるものなので、短期間で変更を繰り返すようなことは適切ではありませんが、現在の顧問弁護士が相談したい分野に精通していなかったり、連絡が取りづらかったりする場合は、あなたの会社に合った顧問弁護士ではない可能性があるので、変更を検討するべきです。
13−7.顧問料は経費にすることができますか?
顧問料は法人の経費として処理することができます。
なお、個人事務所として運営されている法律事務所に支払う顧問料は源泉徴収をする必要がありますが、顧問依頼先が弁護士法人である場合は、顧問料から源泉徴収をする必要はありません。
13−8.複数の顧問弁護士を契約することはできますか?
可能です。
例えば、人からの紹介で顧問弁護士を依頼した場合は、弁護士と相性が良くないと感じても、紹介者の顔を立てるために、解約しづらいというケースもあると思います。そのような場合は、並行して別の弁護士と契約するのも方法の1つです。
また、セカンドオピニオンや現在の顧問弁護士があまり詳しくない分野を補う目的で複数の弁護士を契約する会社もあります。
弁護士によって事件の解決方針や専門分野が異なりますので、複数の弁護士に相談することで、より希望に沿った解決方法が見つかることもあります。
13−9.内部通報の社外窓口を顧問弁護士に依頼することはできますか?
利益相反が生じるおそれがあるため、弁護士法人咲くやこの花法律事務所ではおすすめしていません。
内部通報窓口の担当者は、通報に対して中立・公正に対応することが求められています。一方で、顧問弁護士には、会社側の弁護士として、会社の利益を守る役割があります。
通報窓口に、経営陣の不正やその疑いに関する通報、パワハラ・セクハラ等のハラスメント問題に関する通報、残業代の未払いといった労働問題に関する通報等があった場合、会社と通報者の利害が対立するケースがあり、顧問弁護士は中立・公正の立場で対応することが難しくなってしまいます。
通報窓口の中立性を確保するためにも、内部通報の社外窓口は顧問弁護士とは別の弁護士に依頼することが適切です。
14.顧問弁護士サービスについて相談したい方はこちら
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、顧問契約を検討されている方向けに、弁護士から無料で顧問弁護士サービスについてのご案内をしています。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについて詳しく解説した動画を公開中です。あわせてご参照ください。
弁護士は、何かトラブルが発生した時に相談するものというイメージを持っている方もいるかもしれません。しかし、弁護士の役割はそれだけではなく、顧問弁護士サービスをうまく活用することで、トラブルの発生自体を防ぐことができます。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所へご相談いただくトラブルの中には、「こうしていればトラブルを防げたのに」、「もっと早く相談してもらえれば問題が大きくなる前に解決できたのに」と感じる事案が数多くあります。
予防法務に日ごろ取り組んでいない状態のままで、一度トラブルが発生してしまうと、その解決のために、金銭面や労力面で少なくない負担を負うことになります。
問題が大きくなればなるほど会社が負うダメージも大きくなるため、トラブルは、裁判よりも交渉で解決すること、そしてなによりも日ごろから法務関係を整備し事前の対策を講じておくことが重要です。何か起こった時の最後の手段としてではなく、もっと身近な存在として、ぜひ顧問弁護士サービスを活用していただきたいと思います。
弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、企業法務専門の事務所として、全国500社以上の企業活動を法務面でサポートしてきました。企業側の立場で数多くの事案に対応してきた経験豊富な弁護士が、あなたの会社を守るパートナーとして尽力します。
15.【補足】個人の顧問弁護士とは?
個人の顧問弁護士とは、個人と弁護士が契約し、家庭の問題や個人的なトラブルについて相談ができる、かかりつけの弁護士のことです。日本ではあまり馴染みがありませんが、一部の国では広く認知され、利用されています。
ここからは、個人向けの顧問弁護士について、メリットや費用の相場等をご説明します。
※なお、咲くやこの花法律事務所では、企業や個人事業主向けの顧問弁護士サービスに特化しており、一般の個人向けの顧問弁護士サービスは提供しておりません。
15−1.個人が顧問弁護士を依頼するメリット
個人が顧問弁護士を依頼するメリットは、トラブルが発生した時に、弁護士にすぐに相談でき、弁護士が強い味方になってくれるという点にあります。
交通事故、離婚や相続等の家庭の問題、消費者トラブル、不動産の売買や賃貸に関するトラブル、ハラスメントや残業代の未払い、いじめ等、個人が巻き込まれる可能性があるトラブルは数多くあります。
何かトラブルが発生した時に、問題をよりよく解決するためには、トラブルの初期段階で弁護士に相談し、いち早く弁護士の助言を受けて対応することが重要です。
しかし、弁護士への相談は敷居が高いと感じている方が多く、気軽に相談とはいかないのが実情です。弁護士に相談したいと思っても、すぐに対応してくれる弁護士が見つからないということも少なくありません。その結果、泣き寝入りすることになってしまったり、さらに大きなトラブルに巻き込まれたりする可能性もあります。
顧問弁護士がいれば、トラブルに巻き込まれてもすぐに相談ができるので安心です。特にトラブルが発生していなくても、ちょっとした困り事、些細な心配事でも気軽に相談できるので、トラブルの予防にも効果があります。
15−2.月額料金は法人向けよりも安いことが多い
法人向けの顧問料の相場は月額5万円程度ですが、個人向けの顧問料は、法人に比べて安く設定されていることがほとんどです。
これは、個人の場合は、法人よりも、トラブルに巻き込まれるリスクが少ないことや、トラブルが複雑になりにくいことが理由だと考えられます。
15−3.個人向けの費用の相場
個人向けの顧問料は、弁護士によって様々ですが、月額5,000円~10,000円としている弁護士が多いようです。
個人向けの顧問弁護士サービスを提供する多くの弁護士は、法律相談と契約書のリーガルチェックを顧問契約の範囲内での対応内容としています。トラブルの相手方との交渉や、裁判手続き等を弁護士に依頼する時は、顧問料とは別に、弁護士費用がかかるのが一般的です。
個人向けの顧問弁護士については、以下の記事で詳しく解説していますので、導入をご検討の方は参考にしてください。
16.まとめ
この記事では、顧問弁護士の役割や業務内容、費用の目安等について解説しました。
顧問弁護士は、企業と契約し、継続的に相談を受け、企業経営にまつわる法的な問題について助言を行ったり、リーガルチェックや書面の作成等の法律事務を行う弁護士のことです。
顧問弁護士には、日頃から、トラブルを防止する予防法務に取り組み、また、何かトラブルが発生した時は早期に解決するための助言や対応をすることで、企業活動を法務面でサポートする役割があります。企業活動の中で発生する、労働問題や債権回収、クレーム対応、取引先との契約トラブル等、様々なトラブルの場面で顧問弁護士を活用することができます。
顧問料は、法律事務所によって様々ですが、月額5万円がおよその目安です。
顧問弁護士のメリットは、些細な心配事や困り事を気軽に相談でき、継続的に相談して会社を整備していくことでトラブルに強い会社作りができること、そして万一のトラブル発生時も迅速に対応してもらえることです。
企業活動を行う上で法務への対応は必須であり、法的な紛争はどんな企業でも生じる可能性があります。法務をおろそかにするということは、経営を一気に悪化させかねないトラブルに巻き込まれるリスクを放置するということです。
法的な紛争から会社を守り、安定的に会社経営を行うために、ぜひ企業法務の専門家である顧問弁護士を活用していただければと思います。
記事更新日:2024年9月10日
記事作成弁護士:西川 暢春