こんにちは。咲くやこの花法律事務所の弁護士西川暢春です。
派遣会社は顧問弁護士をどのように選ぶのがよいのでしょうか?
この点を考えるには、まず派遣会社における顧問弁護士の役割を確認することが必要です。
派遣会社では雇用契約を結んだ従業員を、派遣労働者として派遣し、派遣先企業の指揮命令のもとで業務を遂行させます。このように雇用主と指揮命令者が異なることから、労働者派遣においては、一般的な労働契約では生じない問題や紛争も発生しやすくなっています。
また、労働者派遣の分野では、労働者派遣法において、派遣可能期間に関するいわゆる「3年ルール」や、労使協定方式・派遣先均等均衡方式による同一労働同一賃金に関するルール、派遣元台帳その他各種書類の整備に関するルールなど、多岐にわたる独特の法規制があります。これらの法規制を遵守することが、労働局との対応や次回の派遣業許可の更新のために非常に重要になります。
一般の労働契約や人事労務、問題社員対応に関する知識だけでなく労働者派遣法にも精通する顧問弁護士がいることで、派遣会社が抱える問題を適切に解決したり、トラブルをできる限り未然に防ぐための対策を講じたりすることが可能になります。
この記事では、派遣会社における顧問弁護士の役割や、顧問弁護士の選び方についてご説明します。
ではみていきましょう。
▶関連動画:以下の動画でも派遣会社における顧問弁護士の役割について解説していますのであわせてご覧ください。
筆者が代表を務める弁護士法人咲くやこの花法律事務所では、派遣会社向けの顧問契約サービスについて、弁護士から無料でご案内を差し上げております。事務所にお越しいただいての対面でのご案内はもちろん、zoomミーティングやお電話でのご案内が可能です。ぜひお気軽にお問い合わせください。
顧問弁護士に関する重要な関連情報
ー この記事の目次
1.派遣会社によくある悩みとは?
派遣会社では経営者や管理者を悩ませる様々な法的トラブルが発生します。以下に、派遣業の会社が抱えがちな問題の一部を挙げてみましょう。
1−1.派遣法や労働基準法の改正への対応
派遣法、その他の労働関係の法律は度々改正されています。近年では、派遣法独自の同一労働同一賃金ルールの導入、令和3年派遣法改正による「雇用安定措置に関する希望の聴取」についての変更がありました。法改正への対応に不備があると、労働局から指導を受けたり、派遣業の許可の更新に支障が生じたりして大きな問題になってしまいます。
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1−2.派遣社員との労務トラブル
派遣会社では様々な労務トラブルが頻発しています。
たとえば、派遣先の企業から派遣契約が打ち切られたり、派遣労働者の休業や交代を要請されたりした場合、対応を誤ると、派遣労働者との間でトラブルになるおそれがあります。また、派遣労働者が派遣先での労務環境の問題やハラスメント被害について主張し、それをめぐってトラブルになることもあります。
その他、派遣労働者の妊娠や病気、派遣労働者の非違行為や労災といった場面で、派遣会社として適切な対応をすることが求められます。さらに、派遣社員の解雇を検討する場面では、不当解雇のトラブルに発展する危険があるため、慎重な判断が必要です。
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1−3.派遣先からのクレーム
派遣会社では、派遣先の企業からクレームを受けたりトラブルに発展したりすることも多くなっています。
たとえば、派遣契約の中途解除をめぐるトラブルや、派遣先による派遣労働者の直接雇用をめぐるトラブル、派遣労働者が派遣先で発生させた損害の賠償をめぐるトラブルなどです。
これらの対応を誤ると、派遣先からの信頼を失ったり、派遣先に対する損害賠償責任を抱えるなどして、経営に大きな影響を与えてしまいます。
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1−4.派遣料金の不払い
派遣会社では、派遣先から派遣料金を支払われないというトラブルが発生することもあります。派遣先が不当な理由で支払いを拒否した場合も、派遣会社としては派遣労働者に対して給与を支払わないといけないため、派遣料金の不払いは派遣会社の経営において非常に大きな問題であり、迅速な対応が必要です。
2.派遣会社のために顧問弁護士ができること
前項で挙げたように、派遣会社の経営においては様々なトラブルが発生することが考えられ、その対応を誤れば経営に影響を及ぼしかねない事態に発展するおそれがあります。顧問弁護士がいる場合、トラブルの発生防止や、既に生じてしまった問題を解決するためには、以下のようなサポートが可能です。
2−1.派遣法などの法改正への対応
派遣会社では、派遣法や労働関係の法改正に適切に対応していくことが非常に重要です。
顧問弁護士にご相談いただければ、法改正への対応方法について具体的な助言をし、書類の整備等が必要な場合はそれを適切に進めていくことができます。単に法改正に対応するだけでなく、自社の利益を守り、トラブルを回避するための書類整備が可能です。
2−2.派遣社員とのトラブルについての対応
派遣会社では、派遣社員との労務トラブルが発生しやすくなっています。労働条件や休業などをめぐるトラブルは、派遣社員との関係だけではなく、派遣先との関係も絡んでくるため、簡単に解決することが難しいケースが多くなっています。
顧問弁護士にご相談いただければ、トラブル発生後、早い段階で正しい対応を取ることができ、訴訟などに発展することを避けることができます。問題が起きたときに、速やかに顧問弁護士に相談できる体制を整えておくことが重要になります。
また、これらのトラブルに対応するためには、日ごろから、派遣社員との労働条件通知書や派遣社員用就業規則に工夫をこらし、派遣先で問題行動を起こす派遣社員や派遣先からのクレームが多い派遣社員について、懲戒その他適切な対応をしたり、必要な場合は円滑に雇用を終了できるように整備していくことも重要になります。加えて、トラブル時に毅然とした対応ができるようにするためには、派遣法で求められる労使協定や、就業条件明示書等についても万全の整備をしておくことが必要です。
顧問弁護士に日ごろから相談し、これらの整備を進めていくことで、トラブルに強い会社作りに取り組むことが大切です。
2−3.派遣先からのクレーム等、派遣先とのトラブルについての対応
派遣会社は、派遣先からのクレームを受けたり、派遣先との間でトラブルになったりすることもあります。派遣社員が派遣先で損害を発生させたり問題を起こしたりした場合の賠償問題や、派遣契約の中途解約をめぐるトラブルなどについても、顧問弁護士に相談して解決することが可能です。
派遣先から派遣契約を期間途中で解除されたトラブルについて、咲くやこの花法律事務所が顧問弁護士として対応して解除後の派遣料金を回収した事例を以下でご紹介していますので、ご参照ください。
2−4.派遣料金の不払いトラブルについての対応
派遣先の会社が不当な理由をつけて派遣料金を支払わないというトラブルが発生することがあります。この場合も、顧問弁護士に相談したり、派遣先との交渉や訴訟を顧問弁護士に依頼したりすることにより、派遣料金を回収するための適切な対応をすることができます。
2−5.労働者派遣契約書の作成やリーガルチェック
派遣会社においては、労働者派遣の基本契約書や個別契約書を正しく作成することが非常に重要です。
契約書を作成していても、法改正に対応できていない書式を使用しているとトラブル発生の原因になってしまいます。派遣社員が派遣先で損害を発生させた場合に、派遣先から派遣会社への損害賠償請求に上限を設けることも必要です。
日ごろから顧問弁護士に相談し、契約書等の必要書類を正しく整備して、トラブルを未然に防いだり、トラブルが起きた場合のリスクを小さくすることに取り組むことが大切です。
3.咲くやこの花法律事務所における派遣会社の顧問弁護士活用例
咲くやこの花法律事務所では、顧問先の派遣会社から様々なトラブルについてご相談いただき、顧問弁護士が対応しています。顧問弁護士を活用していただくことで解決した事例の一つをご紹介します。
3−1.派遣会社から労働者派遣契約書のリーガルチェックの依頼を受けた事例
(1)事案の概要
派遣会社から労働者派遣契約書のリーガルチェックをご依頼いただき、あわせて、弁護士が、派遣社員が派遣先で金銭を取り扱う際の覚書を作成した事案です。
(2)解決結果
派遣先から提示された労働者派遣基本契約書には、派遣社員が取り扱う金銭の額や、横領などの不正が発生したときに派遣会社が負担する損害賠償額の上限の記載がなく、派遣会社として青天井に責任を負う危険がある内容になっていました。
そこで、リーガルチェックの際に弁護士が、現金、有価証券、その他貴重品等の取扱いに関する覚書を作成し、派遣社員が取り扱う現金等の上限を10万円としました。その上で、派遣会社が負担する損害賠償の上限も10万円とすることにより、派遣社員が横領等をした場合の派遣会社の責任に上限を設けることができました。
(3)ポイント
今回問題となった金銭の取扱いに関する契約条項のポイントは以下の3点です。
1.労働者派遣基本契約書で「別途定める」と記載されている場合の注意点
基本契約書で「別途定める」とだけ記載されている場合は、何も決まっていないのと同じです。単に「別途定める」とするだけでなく、どのようなルールにするかを明確にし、書面にまとめ、合意する内容に修正する必要があります。
もし、基本契約書の締結の段階では合意ができない場合は、合意ができるまでは派遣労働者に金銭等の取り扱いをさせることができない内容の文言としておく必要があります。
2.派遣社員が派遣先で横領した場合、派遣会社に責任はあるのか
労働者派遣基本契約書に金銭の取扱いに関して限定がされていない場合、派遣社員が派遣先に対し損害を与えた場合、下記の民法第715条1項により派遣会社が上限なしに賠償責任を負うことがあります。
▶参照:民法715条1項の内容
ある事業のために他人を使用する者は、被用者がその事業の執行について第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、使用者が被用者の選任及びその事業の監督について相当の注意をしたとき、又は相当の注意をしても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。
・参照元:「民法」の条文こちら
3.派遣従業員が金銭の取扱いをする場合、賠償リスクを軽減する方法
派遣社員による横領事件や不正が起きた場合の派遣会社の賠償責任については、派遣社員が取り扱う金銭の極度額を設定したり、派遣会社が負担すべき損害額の上限を設定したりして、賠償リスクを軽減しておく必要があります。
この事例については以下で詳しくご紹介していますのでご参照ください。
・派遣会社から労働者派遣契約書のリーガルチェックの依頼を受けた事例
また、咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスをご利用いただいている、派遣会社の顧問先のインタビューを以下で掲載していますので併せてご参照ください。
4.派遣会社向けの顧問弁護士の費用(顧問料の相場)について
顧問弁護士の費用には特に統一的な基準がないため、弁護士や法律事務所がそれぞれ自由に料金設定をすることができます。
顧問弁護士の費用の相場の情報など、以下の記事で詳しく解説していますのでご参照ください。
咲くやこの花法律事務所では、対応頻度等ごとに以下の4つの顧問弁護士プランを用意しております。
- ミニマムプラン:月額顧問料3万円+税、月1回~2回程度の相談をお考えの方向け
- スタンダードプラン:月額顧問料5万円+税、週1回程度の相談をお考えの方向け
- しっかりサポートプラン:月額顧問料10万円+税、週2回程度の相談をお考えの方向け
- プレミアムプラン:月額顧問料15万円+税、週3回程度の相談をお考えの方向け
中小規模の派遣会社の方からは、ミニマムプランやスタンダードプランを多くご選択いただいています。ミニマムプランは、日ごろの相談はないがトラブルが起きたときなど、必要なタイミングで法的なアドバイスを受けたい派遣会社にあったプランです。一方、スタンダードプランは緊急時の対応だけでなく、日ごろから契約書の整備などトラブル予防の取り組みを進めたい派遣会社に適したプランです。
派遣会社で顧問弁護士サービスをご利用いただく頻度は、派遣社員の数に比例して増える傾向にあります。規模の大きい派遣会社については、トラブル発生の頻度が高くなりやすいことから、週に複数回のご相談をいただくケースが多く、しっかりサポートプランやプレミアムプランを選択いただく例が多くなっています。
顧問弁護士サービスに関する各顧問契約プランの詳細は以下のページをご参照ください。
▶参考情報:咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについて詳しく解説した動画を公開中です。あわせてご参照ください。
5.咲くやこの花法律事務所に顧問弁護士を依頼いただく方法
咲くやこの花法律事務所に顧問弁護士をご依頼いただく方法についてご紹介します。咲くやこの花法律事務所では、顧問弁護士契約の申込み方法として2つの方法を用意しています。
「事務所にお越しいただいて担当弁護士に会っていただく方法」と「担当弁護士から電話やテレビ電話で顧問契約の内容をご説明する方法」です。
いずれの方法も、実際に弁護士と話をして相性を確かめてから、顧問弁護士契約をしていただくことが可能です。料金もかかりません。具体的には以下の通りです。
5−1.事務所にお越しいただいて担当弁護士に会っていただく方法
事務所にお電話またはメールでお問い合わせいただきましたら、担当弁護士と会っていただく日時を設定します。
面談は平日の午前9時半から午後7時までの間でご都合のよい時間を選んでいただくことができます。事務所の場所は大阪市営地下鉄四つ橋線あるいは中央線の本町駅から徒歩1分です。
以下のページに事務所までの地図や相談室の写真を掲載していますのでご参照ください。
「咲くやこの花法律事務所の事務所のご案内・アクセス情報」は以下をご覧下さい。
担当弁護士が現在の問題点やお困りごと、主なご相談事項などをヒアリングしたうえで最適な顧問契約のプランをご提案します。また、顧問契約をして整備を進めていくべきポイントについてもお話しします。
お越しいただいた当日に顧問契約書をお渡ししますので、ご検討いただき、ご返送いただければ顧問弁護士サービスの開始です。
5−2.担当弁護士から電話やテレビ電話で顧問契約の内容をご説明する方法
咲くやこの花法律事務所では、遠方でお越しいただけない方のために電話やテレビ電話での顧問契約のご説明も行っております。全国からのご要望に対応しています。
事務所にお電話またはメールでお問い合わせいただきましたら、担当弁護士から電話でご説明させていただく日時を設定します。平日の午前9時半から午後7時までの間でご都合のよい時間を選んでいただくことができます。
また、実際に弁護士の顔を見て話したいという場合は、ご希望いただければ、テレビ電話による対応も可能です。ノートパソコンなどカメラのあるパソコンさえご用意いただければ簡単に顔を見ながら話を聴いていただくことが可能になります(特別な機械や事前の準備は不要です)。また、もし、スカイプやチャットワーク、あるいはZoom、MicrosoftのTeamsなどをお使いの場合は、お使いのツールによるテレビ電話の対応も可能です。
お電話では、現在の問題点やお困りごと、主なご相談事項などをヒアリングしたうえで最適な顧問契約のプランをご提案します。また、顧問契約をして整備を進めていくべきポイントについてもお話しします。
お電話でのご説明の後に顧問契約書を郵送しますので、これをご返送いただければ顧問弁護士サービスをスタートすることができます。
お越しいただく方法、電話でご説明する方法のどちらも、顧問契約の説明は無料で行っていますので、気軽にお問い合わせください。
咲くやこの花法律事務所の顧問弁護士サービスについて、具体的なサポート内容やこれまでの実績紹介など詳しくは以下をご覧下さい。
6.まとめ
派遣会社では、労働者派遣法などの法改正への対応や、派遣労働者との労務トラブル、派遣会社との契約に関するトラブルや派遣料金の支払いに関するトラブルなど、日々様々な問題が発生するリスクがあります。
これらのトラブルをできるだけ未然に防ぎ、また、トラブルが発生してしまったときは適切かつ迅速に解決するためには、顧問弁護士のサポートが欠かせません。
日ごろからの予防に向けた取り組みがなければいざというときに自社が望むような解決はできません。その意味で派遣業においては顧問弁護士の活用は必須といえるでしょう。トラブルが発生する前に、顧問弁護士と契約し、日頃からトラブルの予防と派遣法その他の法令にあわせた整備に取り組みましょう。
派遣会社の顧問弁護士は派遣法や労働局の対応、派遣のトラブルに関する裁判例等に精通している必要があります。実はこういった分野に精通している弁護士は決して多くありません。咲くやこの花法律事務所では、人材派遣などの派遣会社に向けた専門的な顧問弁護士サービスを提供しています。また、有料職業紹介などの関連業種にも対応しています。ご訪問またはZoom等の方法による無料面談で弁護士との相性をご確認いただけますので、是非ご利用ください。
7.【関連情報】顧問弁護士に関するお役立ち情報
この記事では、「派遣会社のための顧問弁護士とは?弁護士の役割や選び方」について解説してきましたが、顧問弁護士をお探しの方に向けて、他にも重要なお役立ち情報を公開しています。以下でご紹介しておきますので、あわせてご参照ください。
・顧問弁護士の探し方とは?選び方で重視すべきポイントや注意点を解説
・中小企業向けの顧問弁護士とは?必要性などをわかりやすく解説
・スタートアップに弁護士は必要?顧問弁護士の役割やメリットを解説
記事更新日:2024年9月10日
記事作成弁護士:西川 暢春